最終目標としては、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)の使われた増幅器の、『小信号モデル化』『利得計算』『高域遮断周波数』が計算できるようになることを目指します。
内容的には教科書の受け売りですが、できる限り、特に自分の詰まったところを、細かく説明したいと思います。
(誰得
それでは、それらの計算に必要な予備知識について説明していきます。
『高校レベルの知識』ですので、読み飛ばしてくださって全く問題ありません。
利得(A)の計算の基本は
A = V
out / V
in
です。そのため、必要なことは『電流(I)と電圧(V)と抵抗(R)が正しく計算できること』、これだけです。また、数値計算などは電卓に任せれば良いので、立式ができれば十分です。
これらについての知識は、直列繋ぎと並列繋ぎでの式が立てられれば十分でしょう。つまり、
直列接続において
I = I
1 = I
2
V = V
1 + V
2
R = R
1 + R
2
並列接続において
I = I
1 + I
2
V = V
1 = V
2
R = R
1*R
2/(R
1+R
2)
この式が分かっているなら大丈夫です。
あとは、容量(コンデンサ)に関して、その抵抗値(正確にはインダクタ)が
Z = 1 / j * ω * C // ω = 2 * π * f
という式が分かれば、立式に関しては問題ありません。コイルは、集積回路では(ほぼ)出てきません。
この式の意味に関してですが、ωとjに関しては意味が分からなくても良いです。jに関しては(どこかに怒られそうな気がしますが)無視してくれて構いません。重要なのは、この式に正しく代入して抵抗値を求められることと、抵抗値が周波数(f)と容量(C)に反比例する、という事実です。
さて、立式についてはこれで良いのですが、回路を考える上で幾つか知っておいて貰いたいことがあります。
一つ目は、『大きすぎる抵抗は無視(開放)する』ことです。
ここで、大きい、というのはどのくらいか、という問題になるのですが、大体周囲と比べて数十倍以上違う、というように考えてください。
これは、この計算が工学の分野であることが原因です。ものづくりの世界では、部品には必ず誤差が出ます。そのため、上位2~3桁(有効数字3桁)で値が合っていれば良いので、大きな抵抗は断線していると考えて問題ないわけです。これが何の役に立つかといいますと、次に詳しく触れるのですが、これによって容量を省き、回路を簡単にすることができるのです。
二つ目が、『増幅器には正しく動作する周波数がある』ことです。
これは、容量のしわざで起こります。
先ほど述べた通り、容量の抵抗値は周波数に反比例します。そのため、低い周波数では抵抗値が大きくなり(断線状態:開放)、高い周波数では抵抗値が低く(導線状態:短絡)なります。抵抗値が勝手に変わって、へんなとこが繋がったり切れたりするのですから、それは正しく動作しなくなるものです。
特に問題なのが『高い周波数では抵抗値が低くなる』ことです。
実は、電子回路の容量値Cは非常に小さく、pF(ピコファラッド)の世界です。p(ピコ)は10
-12のことなので、つまり、周波数が1kHz程度のときでは容量の抵抗値はG(ギガ)Ωな単位になる、ということです。
そのため、基本的に『容量の抵抗値が無視できるほど高いとき』が正しく動作する周波数です。
そして、容量の抵抗値が無視できなくなる周波数、これが『高域遮断周波数』となります。
※実は『低域遮断周波数』というものもありますが、いまはおいときます。こちらも容量が悪さをします。
・・・こんなところでしょうか。
もしも読んでいる方がいましたら気になる点、分かりにくい点ご指摘くださいませ。
次回は簡単な増幅器の回路図を示し、実際に利得を考えてみたいと思います。
それにあたって、ナレータ・ノレータというものの解説も行うつもりです。
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