◇ ◇ ◇ ◇
「何を言っているのかしら……?話を聞いたり、話をしたりするのと、『会話』は全く別のカテゴリでしょう。」
えっと、話したり聞いたりをするのが会話だよね。
「そうよ?
あー、ごめんなさい、言い方が悪かったわね。」
「私が好きなのは、何かについて『延々と話を聞き続け』たり『延々と話し続け』たりすることなの。考えをひたすら最初から最後まで述べ続けたり聞き続けたりが好きなのね。
交互に話す連鎖反応の美しさは、会話とか茶番とか言われるものの美しさは理解できるのだけど、私がしたいのはその実の無いものじゃないの。実のあるものばっかりだと疲れちゃうから、コミュニケーションに実の無い会話が重要だって判るし、私も面白い会話ができる人になりたいけどね。」
「ともかく、私は考えを聞いたり語ったりするのが好きなのよ。」
この日記が大抵片方ばっかり喋っているのもその所以なのだね。
「あー、うん、そういうこと。(とりとめなく『会話』が書きたいのに結果的にそうなっているときもあるけど……。)」
ってことは今回は『語りたい』回なのだね。だったら以降はキミが語るのに都合の良い質問をすることにするか。
◇ ◇ ◇ ◇
で、なんで聞いたりするのが好きなの?
「私は自分が何考えてるかを考えるのが好きなのよ。」
……何考えてるって、そんなの今考えてることを考えてるんだよ。
「そうじゃなくって、私は私が何を考えてるかが知りたいの……って、これじゃさっきと表現が変わってないわね。えっと。」
「なにか思い付きとか感情とか、そういう取り留めのないものがあるじゃない。それらはどこからかいきなり湧いてきたわけじゃなくって、原因、背景、根源、理由、過去の切っ掛け、そういうのがあるから湧いているのだと思うのよ。私はそれが知りたいんだわ。」
「もしくは感情を正確に表現したい、とか。あるものが好きだったとして、そのものが好きなのか、それに所属しているある属性に反応しているのか、って違うじゃない?それって思考に、長文にしないと正確に表現できないものよね。そう、感情を、一文じゃなくて長文にして可能な限り正確にしておきたいの。」
「上を纏めると、『自身を文章化したい欲求』とか『自身を正確に伝達したい欲求』って言えそうな気がするけど、それだけじゃなくって、やっぱり私が何考えてるか知りたいのよね。正確な自身の考えって、自分でも判っていないじゃない。だから、『私が何考えてるか知りたい』で合っているわね、うん。」
「何か感情があるけど、それが正確には何を原因としている、どういう対象に反応する、どんな類のものなのかまでは最初はよく判ってない。そのままじゃ気持ち悪いからちゃんと、文章化できるレベルで判りたい。そんな感じかしら。」
『何考えてるか考えたい』の意味はなんとなく分かったけど、話を聞きたいってのとどうつながるのさ?
「結局は『正確に知りたい』のよ。様々な感情、考え、嗜好を。自分に限ったことでなく。但し、自分が正確に理解しきる形で。」
判りにくいから倒置法で喋るなよ。『自分が判るように、できるだけ正確に細部まで、他人が何考えているか知りたい』ってことで良い?
「ええ。そんなかんじよ。」
なんつうか、傲慢だね。
「傲慢?」
知りたいから教えろ、って言ってるだけでしょ?しかも筋道立てて長ったらしく説明するのって面倒だし、オチもないから話として結果的に滑るじゃん。
「会話じゃなくて論説なんだから、オチなんて求める方が間違いよ。話としてつまらなくても何か新しい理解があればそれだけで最高に『面白い』わ。」
キミが面白くても喋ってる側は面白いのかよ。
「普通、語るのって面白いわよね?」
……そうか?
「だって、感情を筋道立てて相手に伝えるっていうのは自身の感情を、つまり自身の一部を相手の脳にコピーしているようなモノよ?つまり自身を増殖させてるのよ?つまり子づくりしてるようなものなのだから、生物の本能的にキモチイ、もとい面白く感じるものじゃないかしら。」
キミは説明すると達するのか。もしくは他者に説明するという行為に下卑た快感を覚えているのか。
「そこまでは言ってないし行ってないけど。ともかく、語るのって楽しいんじゃないかしら。だから話を聞くっていうのはwin-winな関係よ。」
(ひたすら聞かれたらうっぜぇとか思うのが普通じゃないんかね。まぁいいや。)
話すのが好き、っていうのはキミが自身で言った通り、楽しいからなんだね。
「そうね。考えるだけでも楽しいけれど、話すともっと楽しいわ。」
◇ ◇ ◇ ◇
話したり聞くのが好きだってとこまでは判った。そんで、それを踏まえて今主張したいことはなんなんだい。
「あら、随分と、私が話したいことを的確に聞いてくるわね。」
いつもの調子だと話が進まないからね。(一人の人間が会話文作ってんだから、的確に聞けて当たり前じゃないか。)
「私が言いたいのは、もっとそういう話をしませんか、ってことよ。」
そういう話、ってのは考えてることを原因のあたりから筋道立てて話したり(但しオチは無い)、嗜好とかを細部に至るまで詳しく話したり、ってことかね。
「そう。それ。」
イキナリそんなこと言われても難しくない?キミは幾らでも話せるかもしれないけどさ、相手はそうじゃないかもしれないし、キミばっかり喋るのは流石にアレだろ。
「ええ。だから、誰でもできるように、こう言い直すわ。
『アナタの性癖を語ってください。』」
どうしてそうなるんだよ……。
「業の力は偉大よ?自身のさらなる欲求を満たすためなんだから、誰しも自身の性癖に関しては他の雑多なことよりも深く詳しく把握しているはずだわ。つまり、誰しも、性癖だったら語れるはずなのよ。恥ずかしいかどうかは置いておいて。」
えー。(納得しかねる。)
「本当はもっと他のことも話したいのだけれどねー。真面目な話含め。」
◇ ◇ ◇ ◇
「そういうわけで、どうにかして下級生とか新入生とかに語らせたいのよね。」
只のセクハラじゃねーか。
「……今の発言は性癖に限ってないわよ。ま、当分は無理でしょうから、日記に自身の考えを書くだけに終始するのですけどね。」
やめろよー。日記に性癖をひたすら書くとかー。
「だから!今の発言も性癖に限ってないってば!」
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