◆◆◆◆
「つまるところ、『私がまなみちゃんルートをクリアできた』が新たな真実であり、心理的な真理なのね。」
あぁ、そういえばADVゲームで詰むことができる稀有な能力の持ち主だったね。
「そう、今までは濡れ場のシーンに入ると吐き気や怖気や首をかきむしりたくなる衝動に襲われて、それ以上読み進むことができなかったわ。」
エロに対する耐性が無いってこと?悠が部室に置いてあるエロ漫画とか読んでるとこ見てないし。
「いいえ、(何故部室に堂々とエロ本が置かれているのか、については触れないこととして)人前でなければ、別に業自体に対する耐性は、多分そこまで低くはないと思うわよ?」
うっそだー。よめちょい読めって言われて直ぐ本閉じたり、ゲームの濡れ場でctrlスキップしたりする人の耐性が低くないとかうっそだー。(あれはきっと絵の資料として堂々とおいてあるんだよ。きっと。)
「そのあたりは説明が長くなりそうだから割愛したいのだけれど……。簡潔に言うと、私が苦手なのはラブコメであってエログロではない、ということかしら。あとは、人前で読めないのは気分の問題ね。」
気分?テンションが足んないと読めない、みたいな?っていうか人前では読まないとか、ただのむっつり?
「ムッツリではないと思いたいわね。っていうか、他人の前で業ぃモノを見る気になれる精神構造が分からないわ。なんであんなに堂々と部室で読めるのよ。人前でアレな気分になって一体全体どうするつもりよ!?」
多分、それはそれだけで楽しいっていうか満足なんじゃないかなぁ。世の中の人は悠みたいにそうなったら最後まで、みたいな変態的な思考回路じゃないんじゃないかなぁ。
「わ、私だってそんな変態的思考回路じゃないわよ!!人を変態脳みたいに!」
まぁ、悠をいじってると話が進まないから置いといて、ラブコメが苦手なのにギャルゲーするの?
「あー、ごめん、説明を端折り過ぎたわね。確かに甘々過ぎるラブコメも苦手なのだけれど、それは論旨からずれるから言い直すわ。愛の無い業はいいけど、愛のある業はダメなのよ。」
え……?えっと、それは、無理やり手籠めにされる話じゃないとドキドキできないという自身の特殊性癖についての告白……?
「どう解釈したらそうなるのよ……?私は、『業に耐性が無いんじゃないか』と問われたから、『純粋な?業を見ること自体は問題ない』けど『愛情表現として描かれる業は見れない』と返答しただけじゃない。あ、もちろん見れるかどうかとそれでキュンキュンするかどうかは別の話よ?」
(なんていうか……基本的な感覚がずれてる人と話すのって、疲れるなぁ。)えーっと、訳すると、『描写中に「好きだ」とか「愛してる」とか言っちゃう、もしくはラブラブなシーンからの続きでのエロなシーンは見てると怖気がする』ってことでいいの?
「だいたいはそういうことね。」
いやいやいや、それって無理やり手籠めにする話以外認めないって言ってるのとどう違うんだよ。
「愛とか関係なく双方が行為そのものに溺れてる話も含まれるじゃない。」
それが含まれたところで論旨は微塵もかわんねーよ!要は今まで見てきたのはぐちゅぐちゅにされる話かぐちゅぐちゅに溺れる話ばっかりだって言ってるようなものだろう!?
「まあ……『ラブい話は見ていない』の対偶に当たるから、それは正しいのかしらね。」
結果的に特殊なシーンにしかなりえない状況しか残ってないじゃないか!淡々と特殊性癖暴露してんのとどこが違うんだよ!
「よく分からないけれど、過激な妄想のしすぎじゃないかしら?『恋愛の延長線上でそういうことをしている』のでさえなければ特にシチュエーションは問わないのよ?極論、一枚絵なら全て問題ないわ。それをまるで、手足を縛りつけた状態とか謎のお薬と使った状態だとか謎の機械に捉えた状態だとか謎の触手生物に捉えられた状態だとかだけでしかキュンキュンできない人であるかのように話すだなんて、誘導甚だしいわ。」
……ん?いや、でも、その理屈だと、一枚絵や短編漫画ならともかく、ゲームだったらやっぱりそういうシチュエーションしかないよね?
「付け加えておくと、『見ることができる』と『キュンキュンする』は別だから、そこ間違えないこと。故に別に私はそういうのじゃないとキュンキュンできないとは一言も言ってないわよ!」
(そういうのしか見てないけどそういうのでトキメクわけではないって、そうとう論理に無茶が無いかなぁ。)
「なんか言った?」
何も。で、結局なんの話だったっけ。
「だから、これから話す話の前提として、『私は業自体の耐性が無いわけではないのだけれど、ラブい要素の含まれている業な話は見れなかった』と言いたかったの。」
え、今のって話したいことの前提の確認だったの?ってことは今からようやっと話が始まるの???
「そして、『何故今回まなみちゃんルートをクリアできたか』を話すために、次は『なぜラブいのはだめだったのか』の話をするわ。」
つまり、あと最低2つはなんか話すんやね……。
◆◆◆◆
「なぜラブいのはだめだったか、結論から言うと、『想像できない』からと『(大抵は)読むのがかったるいから』よ。」
かってるいって、おい。
「いや、だって、私がラブいのに求めてるのは『萌え』なのよ?基本的には業のシーンなんて、キスシーンを非常に細かく長々と描写してるようなものじゃない?」
えーっと?
「だから、萌えだとか恋愛ものだとかにおけるキスシーンの役割というのは、唇の粘膜同士がいかに接触したかの物理的な細かい描写で表現されるものではなく、前後での葛藤等の精神描写だとか、キスをしたことそのもののイベント的っていうの?儀式的な意味を持たせることにあると思うの。つまり、キスは萌え的には区切り(状態の仕切り板)であって、区切りであるからには幅を持たないものなのよ。故に区切りに態々幅を持たせて長々と描写されても、区切りそのものには(萌え、恋愛ものとしては)意味が無いのだから、読み飛ばしたって構わないわよね。業のシーンも同様の理由で、かつ業のシーンは(キスシーンなら一瞬かそこらで済まされる描写が)確実に一定の長さを持って描写されるから、かったるいわ。」
エロシーン自体の中には求める萌えは存在しないから、読み飛ばしたいってこと?
「ええ、なんていうか、大抵は単なる『読者サービス』なのよ。読まなくても前後の文脈に影響を与えないし読んでもキャラクターの内面把握が深まらない、みたいな。……『カミカゼ』と『しにきす』はそうではなくて、通常会話と同じくしっかり萌えっていうかキャラの描写っていうかをしてきたから、読み飛ばすわけにいかなかったのだけれど……。」
で、読み飛ばすわけにはいかなくなったけど読めなくて詰む羽目になった、っていうのが『想像できない』から、になるのね。
「ええ。っていうか、主な理由はそっちね。『想像できない』から気持ち悪くなって喉を掻き毟りたくなるのよ。」
想像できないって言うと……CG一枚じゃ鮮明な想像ができないから使えないって??
「喉を掻き毟るべきはアナタね。私が想像できないのは、恋愛感情や萌えの延長線上に業が鎮座しているという通念よ。」
いや、結婚とかってそういうことでしょ?
「いいえ。萌えや恋は精神性に対しても行える行為よ。なのに、なぜ肉体的な業が延長線上にあるのかしら。精神的な方向での恋や萌えという概念ができたのは、恐らく結婚という制度ができてからの大分後でしょうから、その反論は適切じゃないわね。」
一目ぼれとか猫耳萌えとかは容姿の話だから肉体的な話だよね。
「容姿と精神性は、特に二次元では直結するわ。ともかく、『愛の延長として業はありえない』と思っているのに『愛である業』が描かれているから『想像できない』で怖気がするのよ。」
……それって、現実が見れてないだけなんじゃ。
「アンタ馬鹿?二次元が現実なはずないでしょ。まさか、アナタにとっての現実はPCゲ―なの?」
(や、でも、普通に現実のカップルもするだろ……!?)
「まぁ、虚構に対する『こんなやついねーよ!』という反応の過剰な物というやつかしら?」
虚構、ねぇ。
「まぁ、以上がラブいのがだめな理由よ。後は『今回は業のシーンが大丈夫だったという(理由の)話』ね。」
◆◆◆◆
アレ?ちょっと疑問なんだけど。結論の話に入る前に、いい?
「何かしら。」
えーっと、『こんなやついねーよ!』って思ったらきもちわるいんだよね。
「そうね。気持ち悪いって言うか……まぁ、そんな感じね。」
例えばだけど、触手生物なんて存在しないよ?
「あれは虚構上の生物で、そういう設定じゃない。現実には存在しなくても、『そういう設定の虚構だから』で済む話よ。」
だったら、ラブいのだって『そういう設定だから』でいいんじゃないの?
「触手生物は存在しないけれど、恋愛と萌えは現実世界に存在するじゃない。現実にあるものに対して虚構設定を追加されると気持ちが悪いのよ。」
なんか納得いかねー。
「私、現実の振りした虚構が大嫌いなのよ。虚構は虚構なのだからいいんじゃない。」
萌えや愛は虚構じゃないの?
「虚構じゃないことにしときたいわね。今のところは虚構じゃないと仮定して考えているわ。」
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「で、今回なんとまなみちゃんルートはスキップせずにクリアできたのよ。」
さっきの話から判断すると、今回はエロシーンにも萌えを見出すことができたからスキップすべきでないと思い、かつ愛の延長としてのエロを理解・想像できたってことでOK?
「前半は正しいけれど、後半は間違いね。」
え?でも、『ラブでエロな状態は想像できない』から今まで見れなかったんだろ?てことは想像できたんじゃないの?
「なに、簡単なことよ。アレはラブなシーンだったわ。萌えで愛で恋だったわよ。でも、それを読んでいる時の私は、あのシーンから業を感じなかったの。だから問題なしよ。」
は?
「例えば、そうねぇ……アナタは男女が手をつないでいるシーンから業を感じることはできるかしら?」
流石に手を繋いでてエロいとは感じないね。
「そうよね。もしかしたら人によっては感じるかもしれないけれど。」
(居たとしたら、よっぽど想像たくましいな、その人。)
「じゃあ、キスシーンはどうかしら?」
んー、私は思わないけど。
「抱擁してるキスシーン。」
それだと状況によりそう。
「ええ、状況に依るわよね、観察者によるわよね。業を感じるか否かは観察者に依るのよ。詰まる所、〇〇〇とか×××とかしてても業を感じないと思えば感じないことは可能だわ。」
……つまり、エロシーンでエロいことしているっていう自覚をしないってこと?流石にむちゃくちゃだろ。
「『あれはただのラブラブなだけのシーンだった。手を繋いだりしているのと同じただのアツアツな描写だった。』これが今回クリアできたという結果よ。」
ホント勿体付けた話をしてややこしく言うのが好きだな。別にラブラブでエロくたって問題なかろうに。アレ読んでエロさを感じようとしない方が書き手と描き手に対して失礼だと思うけど。
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なんか業業言ってて読みにくいけど、悠が業って言ってるとこはエロと読み替えてください。エロって言うのはハズイんだって。わたしゃ態々業業言ってる方が恥ずかしいと思う。
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