◇ ◇ ◇ ◇
「変ね、服装自由って書いてあったはずなのだけれど。念のためにスーツを着ておいて正解だったわ。」
念のためって言うか、こういう場所の服装自由がスーツの意味なのは常識だよ……。
「だったら最初から『スーツ推奨』だとか『フォーマルな装いで』なんて書いておけばいいのよ。意地が悪いじゃない。」
そのあたりも含めて空気を読めるようになるのが、社会人になるってことなんじゃない?
「社会人になるには、意地を悪くしなければならないのね。あら……?社会人の条件が、意地が悪いことなのだったら、紬なら今からでも社会人に成れるんじゃないかしら。」
おいおい、必要条件と十分条件は正しく使えよ。意地が悪いからって社会人に成れる訳じゃないさ。
……って、ちょっと待て、誰の意地が悪いっつったよ誰の!?
「自分の胃に手を当てて、良く考えてみなさいな。」
べ、別に私食い意地なんてはってないぞ!?
◇ ◇ ◇ ◇
「で、就活だけど。どうなのかしら。」
どうって……今日の説明会は、中堅企業・中小企業の説明が聞けたのは楽しかったけど、全体として要約すれば、『HPにエントリーしてね(はぁと)』ってだけだったからねぇ。特に何もって感じだわ。
「ま、流石にこの時期で、参加しないと圧倒的に不利になるイベントなんてないわよね。」
そーそー。モチベーションが高まるだけでしょ。
「で、『就活』だけど。どうなのかしら。」
いや、引用符を付けられても。さっきと質問文が変わっていないじゃないか。
「引用符付の単語は固有名詞的用法又はパフォーマティブに決まっているじゃない。今日の就活事項じゃなくって、就活自体に対して、アナタがどう思っているのかって聞いてるのよ。」
(何が『決まっている』だよ、そんなこと判るわけないよ!)
んーっと。就活自体に関しては、入れるところで、かつ私の能力キャパギリギリくらいの所がいいなって程度にしか考えていません。
「何も考えていないのね。そして、その返答は私の期待していたものとはベクトルがずれているわ。
私が聞きたいのは能力だとか福利厚生だとか……そういう雇用条件の話じゃなくって、職種の方向性だとか、社会貢献という意味での夢だとかの話なのだけれど。」
営業はやだなー。
「……本ッ当に何も考えていないのね。夢とかないワケ?」
夢は正社員です。
「……少なくとも、中学の時に希望の職業についての作文とかは書かされているでしょう。」
中学の時は、適当な大学を出て、自分の能力でギリギリ入れるくらいのランクの、伸びしろのありそうな中小企業に入って、そこで適度に頑張ることが夢だったんだよ。
それなのに、当初の人生設計から見たら相当に分不相応な大学に入ってしまったからさぁ。正直、人生に実感が無いんだよね。こんなルート知らないんだけど。
「なに、学歴自慢か何か?」
学歴なんざ自慢になるかよ、論文もまともに出してないんだから。
偶然、教科書を読むスキルが高かったからこんな場所に居るけどさ、それって学生時代でしか役に立たない論理能力なんだよ。社会の最前線で闘うための基礎ステータスは、多分、中学時代に想定していたステータスとおんなじなんだよ。なのに、所持スキルは前線用のを取ってしまったんだよ。詰んでる。
「……ステータスだとかスキルだとか言われても、厨二病患者にしか伝わらないわよ。」
いいよ、単なる愚痴なんだから。
とりあえずは受けれるところを片っ端から受けて、企業研究する中で動機を考えるさ。なに、理屈をでっちあげるのは得意なんでね。
◇ ◇ ◇ ◇
「さて、紬の愚痴も終わったところで……本日のメーンイベント:妹ゲー探索in秋葉原(の振り返り)よ!」
結局手ぶらで帰ってきたんだよね。
「ちょ、ちょっと空気読みなさいよ!どうしていきなり結果をバラすのよ!?」
いやだって、キミが言うような大層なイベントじゃなかったでしょ。月に1~2回やってるただのエロゲーウィンドゥショッピングじゃないか。
「今回はちゃんと、購入目的のゲームがあって来店したわ。」
それだって発売が延期されてたじゃないか。
っていうか、発売が延期されてないか確認しないだなんて、エロゲーマーとして恥ずべきことだよ。エロゲーとスパロボは発売が延期されるに決まっているさ。
「確かに延期は残念だったけれど、毎月のように出る妹ゲーの存在が私の精神を平穏に保ってくれているのよ。買う予定のものが無かったとしても問題ないのよ!」
……それなんだけどさぁ、悠。キミ、妹萌えとエロゲーマー自称してる割に、たいして妹モノエロゲー買ってないよね。
「初夏にシンセミアを買ったわよ?」
うん、だから、『毎月のように出る妹ゲー』を買ってないよね?妹エロゲーマーを自称するに際して、その行動は不誠実だとは思わないかい?
「『毎月のように妹ゲーが出ている事実を実際に目で見て確認できること』は目の保養になるし精神の活力へと転じるわ。けれど、あれは違うのよ。私の求めている妹ゲーじゃないのよ。
具体的に言うと、ヌキゲーやエロいことをするのが主目的のゲームやいちゃラブ系や妹がいっぱい出てくるゲームは、私の求めている妹ゲーではないわね。」
……キミが言ったジャンルの他に、妹ゲーなんてあるのかよ。
「だから困ってるんじゃない。大抵の妹エロゲーって、複数の妹と甘ったるい爛れた生活をするのが目的じゃない?私の求めるものとは対極にあるのよね。」
いや、というか、キミが求めるモノをエロゲー市場に求めるのが間違ってるんじゃないかなって、そんな気がするんだけど。
「じゃあ何処に求めろっていうのよ……同人ギャルゲー探索という修羅の道に入るしかないのかしら……。」
もう理想を追うのはあきらめて、『毎月のように出る妹ゲー』を買い漁るのは?
「それはそれで、楽しいことは楽しいのでしょうけど……いえ、共通ルートどころかオープニングで詰んで積みゲーになる光景が目に浮かぶわ。」
◇ ◇ ◇ ◇
「最近妹さんに血圧を測られているのだけれど、今日は私も妹さんの血圧を測ったわ。」
あのさ……嬉々としてそういう発言をされると、現実と虚構の区別がついていないのかなって、ちょっと気持ちが悪いんだけど。
「何を言っているのかしら。リアル実妹とヴァーチャル実妹の区別はちゃんとついているわ。具体的には、『嬉々として発言している』内容に、実際はちっとも魅力を感じていないくらいには区別がついているわ。リアル実妹に萌える訳がないじゃない。」
だったらなんで、そんな意味のない発言をするんだよ。キミになんのメリットもないのに、なんで他人が聞いたら『リアルシスコンキモイ』って思うような、不快に思わせるような発言をするんだよ……。
「リアルでシスコンで、ヴァーチャルで妹萌えだということにしておかないと、自我の同一性が保てないからよ。」
シスコンじゃないと保てない自我ってなんなんだよ。
「別に理解してもらおうだなんて思わないわ。
あ、あと。それとはまた別の話として。アイドルと握手出来たら嬉しいけれど、アイドルと結婚したいわけじゃないじゃない?そんな感じで、妹さんとイベントがあると嬉しいけれど、別に妹さんそのものに萌えている訳でも結婚したいと思っている訳でもないのよ。解るかしら。」
(やっぱりコイツ、現実と虚構の区別がついていないんじゃないかなぁ。)
◇ ◇ ◇ ◇
「変ね。ちょっと日記を書こうと思ったら、もうこんな時間よ。」
遅筆だからね。タイピングも早くないもんね。いい加減さ、11/9に妹ゾンと青サバのサイン会行った日記を書きたいんだけど。
◇ ◇ ◇ ◇
追記:
「念のために書いておくけれど、今回のタイトルはただ単に妹ゲーのタイトルを捩っただけよ。私はシスコンじゃないし、ましてやそうだと妹さんに言いたいわけではない:つまり他意は無いわ。」
……もうちょっとさ、他意が無いことが明確なタイトルは無かったのかね。
「内容とは大体合っているでしょう?」
今回の日記のハイライトは『就活』だからね!?一ミリも就活に掠ってないからね!?
「別にいいじゃない、大して内容に掠っていない、何かの捩りのタイトルをつけたって。アナタだって、過去に何度もやっていたでしょうに。」
前世の話を持ち出すんじゃないよ。流石に後のダメージがデカくなりそうな行為は慎めと言っているんだよ。
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