◇ ◇ ◇ ◇
「なつきお義姉ちゃんは可愛いけれど、今回話したい内容はそれとはまた別よ。つまりは主人公がマジ萌えるってことよ。」
えーっと。妹萌えが弟妹萌えにランクアップしたのね?
「違うっ!」
じゃあ何が話したいんだよ。
キミの話は分かりにくいんだ、ちゃっちゃと要旨を述べてくれないかね。
「話が丁寧に作られているってことかしら?
一章の冒頭時点で大体わかることなのだけれど、これってタイムパラドックスものなのよね。(わかる、というと語弊があるかしら。自然とわかるように構成が練られている、と言った方が適切ね。)」
あからさまにタイムマシンの話とか、主人公に似た人物とか出てきているよね。
「ええ、だから予想した感じに、丁寧に話が進んでいくわけなのよ。」
……それってつまんなくね?
「展開が判ることと展開をどう導くかは別の話よ。主人公が勝つことは判っていても、どうやって勝つのかにドキドキするモノでしょう?タイムパラドックスものって、どう解決するのか、どう前後関係が繋がっているかの解法にわくわくするものだから、そこはそれでいいのよ。
……その解法を示す前にいちゃいちゃしやがる所為で私が読みたい部分が何時まで経っても読めないのはなんていうかフラストレーションが溜まるところだけれど。いえ、最近その良さも解ってきたけれど、私のメインはそっちじゃないから、そういうことは全ての謎が解決してから……」
おーい、話が脱線してない?話が丁寧なのがいいとかそういう話じゃなかったっけ?
「そ、そうだったわね。えーっと。
このお話は、主人公が、『姉さんが好きだ』っていうのが主題なのよね。
解るかしら……『恋愛』が主題じゃないの。あくまで、主人公のお話なのよ。」
(キミが見た限りでの)作品を通しての、一番大きな軸がそれだって話?恋愛のいちゃいちゃそのものを描くのがテーマじゃなくて、『姉さん』に対する主人公の一途な行動、感情を描くのが主題だって?
「そうなのよ。主人公の行動原理は『姉さん』への恋愛感情だけれど、物語を通して主として描かれているのは、主人公の行動・心情(だと私は思う)なのよ。」
ギャルゲーの基本目的は恋愛の疑似体験だけど、このゲームは(他のも割とそういうの多いけど)あくまで主人公の物語だってこったね。
んー、でも、それって普通じゃない?
エロさだとかいちゃいちゃさとかよりも心情描写とか物語性の強いギャルゲーエロゲ―って多いだろ、むしろトレンドだろ。殊更に強調するほどのことかい?
「それが、丁寧なように感じるのよ。
姉感や義姉感や『姉さん』に対する思いの描写が緻密だったり……
単なるキャラゲーじゃないのよね。キャラクターは、もう、登場して数行で判るくらいにしっかりしているのよ。そう言う意味ではキャラキャラしい魅力的なキャラクターなのよ。けどそれだけじゃなくって、機微や苦悩が……それも単調じゃない、ともすればメンドクサく見えるような味のある苦悩があるのよ。
あー、でも、シュガスパの時なんかもそうだったけど、いや、もっと前からかしら?メインヒロイン以外の描写は結構手抜き感が……」
おーい、また話がズレそうになってないかー。
「そ、そうね。何の話だったかしら。」
キャラクターの造詣が丁寧なんだっけ?
「ええ、そして、一番それがヤバいのが主人公なのよ。」
主人公って……一人称視点の主人公だよね?あんまりキャラクター造詣や心理描写が深すぎると、感情移入しにくくない?
勿論、物語色の強い……特に伝奇ものとか戦闘系のゲームだったらそういうのもあるし、そういう主人公の需要もあるけれど……恋愛もので緻密な主人公の心理描写をされるとウザったくないかな。
「そこでタイムパラドックスよ!」
は?
「や、だから、そこでタイムパラドックスものであることが光るのよ!」
あー、うん?えーっと、タイムパラドックスと主人公に萌えるだとかいう話になんの関係があるんだい?
「つまりは覇道のじーさんに対する萌えね。こういうとちょっとテンプレっぽくて好きじゃないけれど、この作品の萌えはそれを超越しているけれど、そういうことよ。」
どーいうことだよ!いい加減真面目に分かり易く説明しろよ!
「過去移動が可能だと、一人称視点の主人公以外にも、同じ時間軸に主人公が存在しえるのよ。この作品だとパッと見で二人は主人公以外の主人公が居るわね。」
あー、現在の主人公よりも少し先の未来から、主人公が小さかった過去まで飛んで、現在まで生活してきた主人公とかか。
「更にはとんだ先にもう一人いるかもしれないわね。そうして片方が生き残ったりするかもしれないわ。
ともかく、主人公以外の主人公らしき人の行動の描写がちらほらと入るのよ。で、主人公が『姉さん』が大好きなのは『現在』で散々描写されてるワケ!そうすると、その主人公らしき人も同じ行動原理で行動しているはずでしょう……その時の彼の心情を考えると、もうドキドキが止まらないのよね。
そう、『彼』はやっぱり『姉さん』のために行動しているのよ、行動してきたのよ。時間を超えてきている以上、彼は『姉さん』と、『姉さん』として接せられる訳ではないし、彼には彼なりの制限があるし、彼は彼自身のナニカを犠牲にしてきたはずだわ。
でも……そのなかでの、奇蹟的な邂逅があるのよ。勿論彼は『姉さんの弟である彼自身』として『姉さん』と接せられるわけでは無いわ。でも、その邂逅の中で、『姉さん』自身の性質は変わっていないから、彼の知る姉さんと同じように彼に接するのよ。その瞬間の彼の思いを考えると、もう……たまらないわ。」
……途中から妄想に浸っていないかね。何言ってんだかイマイチ分かりづらいし。
「馬鹿ね、こういう(時間移動のあるような)ゲームでは、ありえる範囲で妄想に浸るのがたのしいんじゃない。」
とりあえず、義姉を想い続けてる主人公(の未来形)に萌えたって話でいいのかい。
「端的に纏めれば、そうとも言えるわね。」
◇ ◇ ◇ ◇
「義妹が別段妹成分のある義妹じゃなかったけれど可愛いから許すわ!」
キミが好きそうなめんどくさいツンデレ系だったね。
なんでこの会社、メインヒロイン以外は、ルート入るときにお座なりになるっていうか急展開って言うかいきなりおっぱじめようとするんでしょうか。
「妹成分はお義姉ちゃんでどことなく補充できるから良しとするわ。というかむしろあの娘は本質的に姉でなく妹だわ。」
本質的に妹って、なんていうか便利な言葉だなおい。もうそれなんだっていいじゃないか。
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